Armがなぜいま重要なのか?エンジニアへの影響は?今後どうなる?

Armがなぜいま重要なのか?エンジニアへの影響は?今後どうなる?

ここ数年CPUに関連する企業の動きが活発です。特に大きな動きとしては次のようなものがあります。

  • スマートフォンの普及
  • appleがMacintoshにM1 CPUを搭載。
  • NVIDIAがCPUの販売を発表(2021年4月)
  • Raspberry PiやArduinoを含むIoT機器の普及

これらの出来事全てにArmが関係しています。Armとなは何者なのか?なぜ近年注目を集めているのか?について説明します。

Armとは?

ArmはCPUを設計している会社です。CPUの設計と言うとImtelやAMDが最初に思い浮かぶと思います。しかし、Armにはこれらの会社に無い特徴があります。

例えばIntelであればCore i7やCeleronなどのIntelブランドのCPUを製造、販売しています。

しかしArmの場合は自社ブランドでの製造、販売をしていません。これがArmの特徴です。

では、製品を販売しないのにどのように収益を得ているのでしょうか?

その答えはライセンスビジネスです。ArmはCPUの設計(アーキテクチャ)そのものを商品としていて、他社はArmアーキテクチャを購入してCPUを製造しています。

Armの目線で考えると、自社で製造・販売するよりも多くの製品に設計を搭載できます。そのため、効率よく開発費を回収することができ、ライセンス料も安くする事ができます。

一方、Armのライセンスを使用する企業目線で考えると、アーキテクチャを自社開発せずとも低コストでCPUの製造、販売が出来るというメリットがあります。また、購入ししたアーキテクチャを、自社でさらに改良することもできるため、各社の強みを活かすメリハリの効いた開発が行えまるメリットもあります。

このように双方にメリットがあるため、Armアーキテクチャは急速に普及しています。また、スマートフォンやIoT製品の成長に伴いCPU(特にマイコン)の流通量自体も増えているため日に日に勢力を拡大しています。

私達の周りにもArmアーキテクチャを使用した製品は溢れており、例えばiPhoneで使用されているA14 Bionicプロセッサや、Androidで使用されているSnapdragon、任天堂SwitchのCPUなどもArmアーキテクチャを採用しています。

台数ベースでいうと、普段触れているCPUはintel、AMDよりもArmの方が多いと思います。

Armは実はかなり普及していて、知名度の割には規模が大きい会社だと言うことを理解いただけたと思います。

最近のArmの動向

Armはもともと独立したイギリスの会社でしたが2016年にソフトバンクが買収しました。孫社長は早いうちからArmの重要性に気づいていたのだと思います。ソフトバンクは広く言えばITインフラやプラットフォームを生業としているので、なかなか相性の良い組み合わせに思えます。

同じく2016年にはMicrosoftが、Armアーキテクチャに対応したWindows10を発表するなど、この頃から急速にArmに注目が集まっています。

その後、2020年11月にApple社もArmアーキテクチャを採用した自社開発のM1チップを発表し、Macへの搭載が開始しました。

つまり2016年頃までは、Armアーキテクチャと言えばマイコンや携帯端末向けのの比較的低機能なCPUとして活用されてきましたが、近年ついにPCやMacのような高機能CPUとしての活用が進んできているということです。

将来的に、PCメーカーはIntelやAMDの既製品を購入して使用するのではないく、Armアーキテクチャを購入し、自社のハードウエアに合わせて最適化した独自のCPUを搭載するのが当然になる日が来るかもしれません。

少し時を戻して2020年9月、Armはソフトバンク傘下からNVIDIA傘下に移りました。NVIDIAと言えばグラフィックボード(GPU)のGeForceシリーズで有名な会社です。

この買収によって、NVIDIAはCPU開発及び、GPU開発の両方をこなせる二刀流になったのです。

NVIDIAの競合

GPUを開発しているメーカーとしてはNVIDIA以外にAMD(Radeon)が挙げられます。AMDもNVIDIAと同様に、CPU開発・GPU開発をこなす二刀流です。これまでは二刀流といえばAMDでしたが、急にNVIDIAが台頭してきたということになります。

逆にいうと、NVIDIA、AMD以外にはCPU・GPU両方を開発しある程度のシェアを獲得しているメーカーはありません。有名なIntelでさえもGPUの領域ではこの二社の足元にも及びません。

私の感覚からすると、今後はこの二社の二強状態が長いこと続くことになると思います。「Intel入ってる」で育った世代としてはIntelに非常に愛着があるのですが、GPUが特に重要になってきている今、Intelが巻き返すのには長い時間がかかるように思われます。

Arm CPU×NVIDIA GPU

近年のコンピューターではとにかくGPUが重要です。GPUは単純な計算を高速に行えるコンポーネントであり、多様な分野で活躍しています。ゲームはもちろんのこと、自動運転、翻訳、監視カメラ、仮想通貨のマイニング、など活躍の領域を挙げるとキリがありません。

自動運転や監視カメラなどは 特に発展が著しい分野です。この分野は組み込み系と呼ばれており、いわゆるパソコンのようなコンピューターではなく、マイコンを中心としたコンピュータになっています。

冒頭でも述べた通り、Armはこのマイコン分野では圧倒的なシェアを誇っています。そしてGPU分野ではNVIDIAが強いシェアを持っています。この二社の技術が一体になるというのは、現代のトレンドと非常に相性が良いのです。

このような背景があり、自動運転などの領域でもArmを含むNVIDIAが躍進を遂げており、Armの注目度もますます上がっているということになります。

エンジニアへの影響は?

Armの注目が増すにつれてエンジニアの働き方、求められる技術への影響が気になるところですが、少なくともこの記事を読まれてる方には影響がないと思います。

繰り返し申し上げている通り、Armは組み込み系では従来から重要な会社であり、関連するエンジニアはすでに対応済みかと思います。

また、プログラミング言語が変わるわけでもありません。C言語でいえば、コンパイラが変わるイメージです。我々エンジニアは従来通り慣れ親しんだ言語で開発を進めることになると思います。

影響を受けるのは、コンパイラを開発するような人や、アセンブリ言語などのいわゆる低レイヤを扱う方です。おそらくこれらの方は、深い知識を持ち合わせているので、そもそもこの記事は読んでいないと思われます。

まとめ

以上説明した通り、Armは元々力のある会社でしたが、近年技術領域を拡大してますます力をつけています。

加えてNVIDIAとの統合により近年の技術トレンドとの相性がさらによくなっています。

今後もArm、NVIDIA中心の世界が続くと予想されます。